食品ロスの削減・有効活用
食品ロスの削減・有効活用の考え方
限りある食資源を無駄なく有効活用することは、食品メーカーの重要な責任です。サプライチェーン全体で工夫を重ねて、食品の持続的な生産と多くの方の暮らしやすさを両立させていく必要があります。
キユーピーグループは、サステナビリティに向けた重点課題「資源の有効活用・循環」の取り組みテーマのひとつに食品ロスの削減・有効活用を掲げ、食品残さ削減、野菜未利用部の有効活用、商品廃棄の削減に注力して取り組んでいます。
食品ロス削減への対応
限りある食資源を利用する食品メーカーの重要な責任として、キユーピーグループでは食品ロスを削減して、資源の有効活用に努めてきました。
近年、気候変動により原料となる農産物等への収量や品質へ影響が生じるなど、食品ロス削減の重要性は一層高まっています。また、お客様をはじめとするステークホルダーからの食品ロス削減への関心も高まっており、その期待に応え続けたいと考えています。
キユーピーグループでは、サプライチェーンの各段階における食品ロス(図参照)への理解を進めています。グループ内での連携とステークホルダーとの協働により、さまざまな取り組みをサプライチェーンの各段階で展開し、食品ロス削減を実現していきます。

サプライチェーンの各段階で発生する食品ロス
商品廃棄の削減
商品廃棄の主な原因は、需要予測による生産と販売実績とのギャップや流通段階での売れ残りによる返品が生じることなどによります。各社各部門が連携するのはもちろんの事、フードバンクへの寄贈も積極的に行うことで課題解決に向け取り組んでいます。
食品ロス削減を目標に生産・販売・物流が連携したワーキンググループ
2015年より関係部署が集まり、月に1度のワーキンググループを開催しています。
ここでは「商品在庫」に着目し、製造から流通に至る過程でのさまざまな課題や解決策を話し合います。
この活動により、社内の食品ロス削減に対する意識も変化したことで、計画的な生産が実現し、商品在庫の適正化によって、廃棄削減につながっています。
お取引先と連携した返品削減の取り組み
関東地区の一部の販売店・卸店と連携し、売れ残りにより廃棄される商品の削減に取り組みました。各店舗の商品の販売傾向を見直して、商品の納入の最適化を図り、取り組みが難しいと言われていた返品ゼロを実現しました。
社内外の連携を進めて、サプライチェーン全体での商品廃棄の削減に取り組んでいきます。
賞味期間延長と賞味期限「年月表示」への変更
キユーピーグループでは、製法や容器包装の改良による賞味期間延長と賞味期限の「年月表示」切り替えを通して、食品ロス削減に取り組んでいきます。
マヨネーズの賞味期間延長

マヨネーズを長期間保存した場合、酸素などの影響により品位が低下することがあります。
「キユーピー マヨネーズ」は発売以来、酸素を通しにくい多層容器採用や、植物油中に溶け込んでいる酸素を限りなく取り除いた「おいしさロングラン製法」の導入、製造工程中の酸素レベルの低減など、製法・容器でさまざまな工夫をしてきました。また、「キユーピーハーフ」では、配合の変更により品位を向上させることに成功しました。
これにより、「キユーピー マヨネーズ(50g~450g)」「キユーピーハーフ」の賞味期間を、従来の10カ月から12カ月に延長※することができました。
※2016年1月より開始
パッケージサラダの消費期限延長

株式会社サラダクラブでは、「野菜本来の抵抗力を活かし、なるべくダメージを与えないように洗浄すること」と「10℃以下の低温流通管理(コールドチェーン)」を両立させ、パッケージサラダの鮮度を維持する技術の確立に取り組んできました。
「野菜にやさしい製法(特許4994524号)」取得後、約4年間の検証を重ね、野菜へのダメージを更に抑えながら洗浄する技術を確立しました。その結果、「千切りキャベツ」の消費期限を1日延長※することができ、加工日に加え5日間となりました。(沖縄県は除く)
消費期限延長により、販売店では売れ残りによる廃棄ロスや売り切れによる販売機会ロスが低減できます。
また、お客様にはまとめてご購入いただきやすくなりました。
※2019年4月より開始
介護食・素材パウチの賞味期間延長と「年月表示」への変更

介護食「やさしい献立」シリーズ47品(賞味期間18カ月または12カ月の商品)※1と、サラダクラブ「素材パウチ」シリーズの一部※2について賞味期間を延長しました。
また、この2シリーズにおいては、賞味期間延長に加えて、賞味期限を「年月日表示」から「年月表示」に変更しました。賞味期間延長と賞味期限の「年月表示」により、返品や食品ロス削減へつなげています。
※12018年9月より開始
※22019年3月より開始
食品ロス削減のためのメニュー提案
食品ロス削減に向けた取り組みを、お客様が毎日の食生活の中で実践する支援をしたいと考えています。
野菜の外葉や芯などは、捨ててしまいがちな部位ですが、少しの工夫でおいしい食材として活用することをおすすめしています。傷や外敵などから野菜を守ったり成長が盛んな部位にあたることで、他の部位とは違う栄養や機能に優れている場合もあります。
料理メニューを紹介する「とっておきレシピ」サイトで、2019年から東京家政大学の皆さんが考案してくれたメニューなどをご紹介しています。
今後もさらにいくつかの野菜を紹介し、食材をよりよく活用する食生活の提案をしていきます。
有効活用の推進
キユーピーグループは、さまざま取り組みにより食資源の有効活用に取り組んでいます。
野菜未利用部の有効活用
キユーピーグループでは、サラダ・惣菜の加工時に生じる野菜の芯やへた、外葉や皮などの未利用部の有効活用に取り組んでいます。
2017年度カット野菜工場の株式会社グリーンメッセージでは、これまで事業規模では難しいとされたキャベツ・レタスの葉物野菜の飼料化に成功しました。東京農工大学とキユーピーの共同研究※で、この飼料を与えた乳牛は乳量が増加することが報告されています。
また、株式会社サラダクラブでは、パッケージサラダを製造する際に直営7工場で発生する野菜の外葉や芯などの未利用部を堆肥や飼料として契約農家などで活用いただいています。
加えて、通常処分していたキャベツの芯を使用し「キャベツライス」として商品化、こちらも「野菜廃棄物ゼロ化」につながっています。
※日本畜産学会第124回大会(2018年3月)発表
平成30年度リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰 キユーピーグループが内閣総理大臣賞を受賞

野菜の未利用部の有効活用(例:キャベツ)
卵の100%有効活用
キユーピーグループでは、マヨネーズ以外にもさまざまなタマゴ加工品を生産しており、日本で生産される卵の約10%を使用しています。
「キユーピー マヨネーズ」は、卵黄を使用し、卵白はかまぼこなどの水産練り製品や、ケーキなどの製菓の食品原料として使われます。
また、年間約2万8千トン発生する卵殻は土壌改良材やカルシウム強化食品の添加材などに有効活用しています。卵殻膜は、化粧品などへの高度利用に取り組んでいます。

卵の有効活用
卵殻は米も強くし、ヒトの骨をも強くする
東京農業大学 応用生物科学部 辻井良政教授、加藤拓准教授と共同で、卵殻の肥料としての価値を研究しています。現在までに、水田に卵殻を施肥することで、猛暑などの天候不順による水稲への影響を低減し収穫量を改善すること、米の品位が向上することが分かってきました。米の作付面積は日本の耕地面積の中で最も大きい※ため、将来的には、キユーピーグループだけでなく日本全体の卵殻の有効活用も期待できます。
また、ベトナムのハノイ国立栄養研究所との共同研究では、卵殻カルシウム(食用微細化卵殻粉、炭酸カルシウムを主成分とする生体素材)がヒトの骨量を増加させることを確認しました。卵殻は、高齢化で世界的に課題となる骨粗しょう症の解決に貢献できる素材です。現在ベトナムでは、卵殻カルシウムを配合した栄養強化食品の販売と合わせ、学校や病院への認知啓発と提案を進め、子どもの体格向上と高齢者の骨粗しょう症への課題解決に取り組んでいます。
※農林水産省 平成30年農作物作付(栽培)延べ面積及び耕地利用率 参照
メッセージ
卵殻の可能性を明らかにすることが今後の課題です

卵殻の主成分であるカルシウムは、植物の細胞ひとつひとつを頑健にするだけでなく、細胞内でさまざまな生理活性をもつと考えられています。一方、気候変動が地球規模で生じるなか、人間にとっても大変な猛暑は、お米の収量を減らす原因のひとつです。我々は、卵殻のカルシウムが稲の夏バテを防ぎ、お米の収量を安定化させると考えており、そのメカニズムを明らかにすることが、今後の課題です。
東京農業大学 応用生物科学部
農芸化学科 土壌肥料学研究室
准教授 加藤 拓
卵殻膜の機能
キユーピー独自の製法で卵殻と卵殻膜を分離することに成功しました。水に溶ける卵殻膜には、肌のハリの素となるⅢ型コラーゲンを増やす働きがあることがわかり、1991年から化粧品原料として活用しています。
卵殻と食酢から生まれたカルシウム肥料
キユーピー醸造では、卵殻を食酢に溶かしたカルシウム肥料「葉活酢(ようかつす)」を開発・販売しています。
定期的に葉の表面に散布すると、カルシウム欠乏症を防ぐ効果があり、野菜や果物、花など植物が元気に育ちます。
食品由来の成分なので、人や環境にやさしく、安心してお使いいただける商品です。
卵殻活用のあゆみ
- 1956年 卵殻を天日で干し、土壌改良材として農家に販売を開始
- 1969年 卵殻の破砕・乾燥設備を導入(旧仙川工場)
- 1981年 卵殻を食品用カルシウムとして発売(膜除去技術の確立により実現)
- 1991年 卵殻膜を加工、化粧品原料として発売
- 2007年 卵殻を建築材や日用雑貨(壁紙、タイヤなど)の原料として発売
- 2012年 卵殻を肥料として生産した米に関する研究を開始
- 2017年 ベトナムにて栄養強化食品として卵殻カルシウムソースを発売
- 2019年 卵殻に関する取り組みが「3R推進功労者等表彰」農林水産大臣賞を受賞
- 2020年 卵殻に関する取り組みが「食品産業もったいない大賞」農林水産省食料産業局長賞を受賞
- 2021年 「卵の有効活用」動画がサステナアワード2021にて「みどりの食料システム推進賞」を受賞