研究レポート調味料・食油用リサイクルペットボトルの活用に向けた安全性の確認

※掲載内容は2023年6月時点の情報に基づきます。

ペットボトルの資源循環の動きを加速させたい

私たちは、食品の容器包装などにプラスチックを使用しています。プラスチックは、軽くて壊れにくく、食品ロスの削減やエネルギー効率の向上にも寄与しています。しかし、海洋プラスチックごみをはじめ、地球環境への影響が指摘されており、持続可能な社会の実現をめざし新たな取り組みが求められています。
日本国内の使用済みのペットボトルは、食品トレイや繊維など、さまざまなものにリサイクルされています。その中で、飲料業界では使用済みのペットボトルをリサイクルして新たな飲料用ペットボトルにする「ボトルtoボトル」の取り組みが進んでいます。
ドレッシング、酢や醤油などの液状調味料や食用油は、飲料とは内容物の性質、充填温度や賞味期間などが異なることから、地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所 尾崎麻子主幹研究員の監修のもと、株式会社Mizkan、キッコーマン株式会社、日清オイリオグループ株式会社、キユーピー株式会社の4社合同でメカニカルリサイクル法により製造されたペットボトルを液状調味料や食用油に使用した時の安全性評価に取り組みました。

メカニカルリサイクル法とは

ペットボトルを食品の容器包装にリサイクルする方法の1つで、清涼飲料水用などのペットボトルを回収して、粉砕・洗浄した後、高温下で一定時間処理し、汚れを除去するリサイクル方法です。

長野 学
(技術ソリューション研究所 加工・包装研究部 包材開発チーム)

食の明るい未来を創造するために、ユニバーサルデザインや環境配慮などの容器包装の研究開発に日々取り組んでいます。

研究概要

メカニカルリサイクル法により製造されたペットボトルを、液状調味料および食用油の容器へ利用した場合の安全性について、食品擬似溶媒による溶出試験および予測ソフトウエアのシミュレーションにより評価しました。
溶出試験に使用したメカニカルリサイクルペットボトルは、フレーク状に粉砕したペットボトルを代理汚染物質で意図的に汚染させて、実際のメカニカルリサイクル工程を経て代理汚染物質残存量を低減させた樹脂より作製しました。
溶出条件は、液状調味料等の最長の賞味期間である25℃2年に相当する40℃5カ月としました。液状調味料や食用油の特性を考慮し、食品擬似溶媒には、4%酢酸(食酢やドレッシング等の酸性食品)、水(醤油やだし等の弱酸性~中性食品)、20%エタノール(みりんや料理酒等のアルコールを含む食品)、ヘプタン(食用油やドレッシング等の油脂・脂肪性食品)を用いました。

研究成果

ボトルから食品擬似溶媒へ溶出した代理汚染物質の濃度は、厚生労働省が食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針にて提示している推奨溶出限度値である10ng/mlをいずれも下回っていました。
シミュレーションソフトを用いて、食品擬似溶媒への代理汚染物質の溶出量を推定した結果、25℃2年および40℃5カ月の溶出条件では、最大で0.4および0.5ng/mlと推定され、限度値10ng/mlに対して十分に低い濃度であることが示唆されました。
今回の結果から、メカニカルリサイクルペットボトルは、厚生労働省の指針を十分に満たしており、液状調味料および食用油の容器として問題なく使用できることを確認しました。

出典:近藤ら,Safety evaluation of PET bottles regenerated through mechanical recycling for use as liquid-seasoning and edible-oil containers, Japanese Journal of Food Chemistry and Safety, 29(1), 19-27 (2022)

今後の展望

今回の研究成果を受けて、調味料・食用油業界全体でリサイクルペットボトルの普及につなげていきたいと考えています。
今は、リサイクル・再利用することなく廃棄してしまうリニアエコノミー(直線型経済)から、廃棄物をなくし資源として循環させるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への変わり目であり、今後さらにこの動きは加速されると予想されています。ライフサイクル全体を通じて設計・製造・販売・利用・回収・リサイクルの一連の流れをつなぎ、業界を巻き込みメーカーと行政、そしてお客様と連携する動きが重要と感じています。未来に向けた“より良い循環”づくりに取り組むことで、環境配慮はもちろん経済成長を同時に実現し、お客様の楽しく健やかな食生活に貢献したいと思います。

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