脳や体の健康に欠かせない卵黄コリン

脳や体の健康維持との関係が注目されている栄養素「コリン」。食品中では、ホスファチジルコリン、スフィンゴミエリン、グリセロホスホコリンなど、様々な形で存在しています。 卵黄には、リン脂質の一つである「ホスファチジルコリン」の形で多く含まれ、 「卵黄コリン」と呼ばれています。「卵黄コリン」は様々な効果が期待されていますが、特に脳機能との関係について詳しく解説するとともに、キユーピーと卵黄コリンに関する取り組みを紹介します。

脳機能の改善以外にも期待される卵黄コリンの効果

動脈硬化や脳梗塞の予防 動脈硬化の危険因子といわれるホモシステインを除去する働き 肝機能の改善 脂肪代謝アップにより肝機能が改善 妊娠期や授乳期における重要な栄養素 胎児や新生児の脳を形成する上で、母親の食事に取り入れることが重要 睡眠改善の可能性 アセチルコリンはレム睡眠を誘発

脳機能との見逃せない関係「卵黄コリン」の底ヂカラ

私たちが卵を食べると、胃や十二指腸、小腸といった消化管を通り消化・吸収されます。卵の中の卵黄コリンは、小腸で吸収され、肝臓や脳など全身へ届けられます。脳へ運ばれた卵黄コリンは血液脳関門を通過し脳内へ。アセチルコリンとなって情報伝達に関与します。

※血液から脳組織への物質の移行を制限する仕組み。脳に有害物や不要物が入り込むことを防ぐ役割を果たす。

※画像を左右にスライドしてご覧いただけます。

総務省の統計によると、2020年9月時点の日本の高齢者(65歳以上)の人口は3616万人。総人口に占める割合は28.7%と、過去最高になりました。超高齢社会となったこの国の課題のひとつが、認知症です。認知症のタイプのひとつ「アルツハイマー型認知症」は、脳の神経細胞の変性が原因と考えられ、進行すると脳の萎縮も。根治治療薬が存在しない現在は、「発症リスクを抑える=予防する」ことが重要だとされています。

認知症予防において忘れてはならないのが、食生活です。たとえば、青魚に多く含まれるDHAやEPAは脳神経の保護、チョコレートの主原料であるカカオポリフェノールは脳血液量の増加というように、食生活と「脳」の健康には、深い関わりがあることがわかっています。加えて脳の働きを活性化し、認知機能に効果があるといわれているのが「コリン」。卵や大豆に多く含まれるコリンは、脳内の情報伝達を行うアセチルコリンの原料となり、アルツハイマー型認知症の予防に効果的と期待が高まっています。

研究者が語る、コリンの重要性
アメリカでは必須栄養素に指定されています。

コリンは日本においてはまだなじみのない栄養素ですが、欧米やアジアでは目安量を設定する国が増えています。アメリカでは必須栄養素として指定され、1日の摂取目安量は男性550mg、女性425mg。その値は、ビタミンB1やB2の約400〜500倍にもなります。

脳機能の改善や脂質代謝、血管の健康にも重要な役割を果たすコリンは、現代人には欠かせない栄養素。コリンの摂取量が多い人は、認知機能が高いという報告も出ています。総コリン量が多い食品の代表として、生の牛レバーや鶏レバー、小麦胚芽などと並んで「鶏卵」があります。安価で手軽に取れる卵なら、コリンを効率的に摂取できますね。

資料:米国農務省のデータベースより

三浦 豊
東京農工大学大学院
農学研究院応用生命化学部門 栄養生理化学研究室教授

出典:「キユーピー通信」Vol.106『「卵黄コリン」ってなんだ!?』より一部改変

卵黄コリンとキユーピーの歩み

「鶏と卵を科学しよう」コリンに見た、限りない可能性

時は1980年代。当時のキユーピーの社長・藤田近男は、「卵に秘められた栄養機能を解明して、人々の健康づくりに役立てたい」という情熱を抱き、会社のビジョンを具現化する新たな研究テーマを模索していました。折しもそのころは日本の高度経済成長期が一段落し、商品の「質」や「機能性」に人々が目を向けるようになった時期。そうした世の中の変化を受けてキユーピーも、鶏のトサカに含まれるヒアルロン酸の研究に着手するなど、「鶏と卵を科学する」ことに本格的に取り組むようになりました。

藤田がなにより熱い視線を注いだのは、「コリン」という栄養素です。卵のリン脂質には、このコリンが「ホスファチジルコリン」の形で豊富に含まれています。そのころ欧米では、コリンが脳に届き、記憶の形成を助けることを示す研究が盛んに行われていました。さらなる研究によってコリンが脳に及ぼす影響を解明できれば、社会問題になりつつある認知症に対して有効な一手が打てるにちがいない。そんな想いを支えに、キユーピーは卵黄コリンの新たなプロジェクトチームを編成しました。

卵黄コリンが脳に果たす役割とは? 認知症予防の新時代へ

そこでキユーピーは、認知症研究の第一人者で当時、高知医科大学で神経精神医学教室の教授を務めていた池田久男教授のもとに、キユーピー研究所の研究員が学びに行きました。池田教授は、食生活を通じて健康の増進と病気の予防を図る「予防の医学」を提唱している臨床研究医です。池田教授をはじめ、神経精神医学教室の先生方と力を合わせ、脳の記憶に関する神経伝達物質「アセチルコリン」と卵黄の「ホスファチジルコリン」との関係性を解き明かすさまざまな研究を行いました。

卵黄コリンをお客様にお届けするためにプランを練るマーケティング活動と並行して、研究は何年にもおよびました。その結果、いくつかの重要な事実が見えてきます。たとえば、食品として摂取されたコリンが脳に届くには、血管を通って「血液脳関門」を突破しなくてはなりませんが、それにはコリン単体での摂取よりも、リン脂質に含まれたコリンのほうが適していること。そして、リン脂質に含まれたコリンには大豆由来と卵由来のものがあり、なかでも卵はコリンの濃度が高く、吸収効率が良いこと。卵は、コリンを摂取するために推奨したい食品であることが明らかになったのです。

創始者の「お客様の健康を願う想い」を大切にしてきたキユーピー。根底にあるのは、すぐに結果が出なくても諦めず、ビジョンを持ってやり遂げる「チャレンジ精神」です。このプロジェクトでもこの精神を貫き、そこで得た経験がその後のヘルスケアカテゴリーの礎となりました。認知症は、超高齢社会に突入した日本の、重大な社会課題のひとつです。認知症の予防に、「卵黄コリン」がどのような役割を果たすのか。キユーピーは今後も研究を進めていきます。

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