研究・調査

21/11/04

No.104

11月11日は「介護の日」

「介護にまつわる意識調査」結果報告

「誤嚥」に対する高い認知日常的に飲食物にとろみづけをする人は、8割以上が意味も理解

 キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、11月11日の「介護の日※1」に向けて「介護にまつわる意識調査」の結果を公表します。本調査は、在宅における介護の実態を調査・分析することで、介護の不安解消や課題解決に向けた提案につなげることを目的としています。2017年にスタートし、今回で6回目となります。

 厚生労働省の報告※2によると、日本人の死因第6位は「誤嚥性肺炎」です。誤嚥性肺炎は、加齢による嚥下機能の低下が一因となり引き起こる病気です。総務省によると、日本の65歳以上の人口は3,640万人、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%とそれぞれ過去最高を更新※3し、高齢化の進む日本において「誤嚥※4」予防は重要な課題です。そこで今回、「誤嚥」に対する認知や、誤嚥防止のための飲食物への「とろみづけ」の実態について調査を行いました。

<サマリー>

  • 「誤嚥」に対する高い認知。日常的にとろみづけをする人は、8割以上が意味も理解
  • 「介護食」を準備している人は、飲み物にも食事にも「とろみ調整食品」を活用
  • 「片栗粉」はダマになりやすさと経時的なとろみの低下に不満。「とろみ調整食品」は「味」に対するネガティブイメージが課題

■調査方法の概要

調査手法:アンケート調査(WEB回答)
調査期間:2021年9月7日(火)~10月14日(木)
調査対象:キユーピー「やさしい献立」キャンペーンにご応募いただいた全国の男女計2,458人

※1 「介護の日」:介護について理解と認識を深め、介護従事者、介護サービス利用者および介護家族を支援するとともに、利用者、家族、介護従事者、それらを取り巻く地域社会における支え合いや交流を促進することを目的に、2008年に厚生労働省が制定しました。

※2 厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計月報年計(概数)の概況」

※3 総務省統計局「令和3年9月19日「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで-」」より引用

※4 「誤嚥」:飲食物や唾液を飲み込んだときに気道(気管)に入ってしまうこと。詳しくは、高齢期の食事・水分補給サイト参照(https://www.kewpie.com/education/information/senior/enge/enge_01.html

■調査結果の概要

「誤嚥」に対する高い認知。日常的にとろみづけをする人は、8割以上が意味も理解

 「誤嚥」について知っているか尋ねたところ、普段「介護食※5」を準備して飲み物にもとろみをつけている人は、81.7%が誤嚥を「知っていて、意味も理解している」ことが分かりました(資料1)。「通常の食事※6」を準備している人でも、誤嚥を「知っていて、意味も理解している」人は67.1%と高い割合で、誤嚥のリスクが低い層でも気にかける人が多い様子が見て取れます。一方で、「介護食」を準備して飲み物にとろみをつけている人でも、「知らなかった」(2.9%)、「言葉は聞いたことがあった」(15.4%)と、2割弱の人は意味を理解しないままとろみづけをしている実態もうかがえました。

※5 本調査においては、「配偶者・親・おじおば・祖父母など、高齢の喫食対象者に提供するやわらか食やきざみ食などの食べやすさに配慮した食事」のこと。

※6 やわらかさなどを調整していない、通常の固さの食事のこと。

「通常の食事」:通常の食事を準備している人(N=1,545)、「介護食(飲み物とろみなし)」:介護食を準備し、飲み物にとろみをつけずに提供している人(N=582)、「介護食(飲み物とろみあり)」:介護食を準備し、飲み物にとろみをつけて提供している人(N=208)

「介護食」を準備している人は、飲み物にも食事にも「とろみ調整食品」を活用

 普段「飲み物」にとろみをつけている人に「とろみをつけるときに使用する食品」を尋ねたところ(複数回答可)、「通常の食事」を準備している人では「片栗粉」(72.3%)が最も多かったのに対し、「介護食」を準備している人では「介護用のとろみ調整食品」(59.6%)が最も利用されていることが分かりました(資料2-1)。

「通常の食事」:通常の食事を準備している人のうち、普段、飲み物にとろみをつけて提供している人(N=101)、「介護食」:介護食を準備し、飲み物にとろみをつけて提供している人(N=208)

 同様に、普段「食べ物」にとろみをつけている人に「とろみをつけるときに使用する食品」を尋ねたところ(複数回答可)、「片栗粉」が「通常の食事」を準備している人で84.9%、「介護食」でも50.4%と、最も多いことが分かりました(資料2-2)。「介護食」を準備している人では、「片栗粉」に次いで「介護用のとろみ調整食品」(41.2%)も高い結果となりました。
 「通常の食事」を準備している人は、片栗粉などなじみのある食材を使って、家族の食事と一緒に作っているものと推察されます。一方、「介護食」を準備している人は、介護用のとろみ調整食品を飲み物にも食事にも活用しながら、片栗粉も利用するなど、場面に合わせて使い分けているものと考えられます。

「通常の食事」:通常の食事を準備している人のうち、普段、食べ物にとろみをつけて提供している人(N=146)、「介護食」:介護食を準備し、食べ物にとろみをつけて提供している人(N=272)

「片栗粉」はダマになりやすさと経時的なとろみの低下に不満。「とろみ調整食品」は「味」に対するネガティブイメージが課題

 「飲み物」にとろみをつける上で困っていることを尋ねたところ(複数回答可)、「片栗粉」を使用している人では「ダマができる」(28.6%)、「時間が経つと緩くなる」(25.0%)、「加熱しないととろみがつかない」(16.1%)が上位に挙がりました(資料3-1)。「とろみ調整食品」を利用している人では、これらの回答は低い傾向が見られ、「片栗粉」のお困りごとを「とろみ調整食品」が補填していることが分かります。一方「とろみ調整食品」については、「味が気になる」(15.3%)が「片栗粉」に比べて高く、味に対してネガティブなイメージを持たれているようです。

「片栗粉」:介護食を準備している人のうち、片栗粉を使って飲み物にとろみをつけて提供している人(N=56)、「介護用とろみ調整食品」:介護食を準備している人のうち、介護用とろみ調整食品を使って飲み物にとろみをつけて提供している人(N=124)

「食事」にとろみをつける上で困っていることを尋ねたところ(複数回答可)、「飲み物」と同様の傾向が見られました(資料3-2)。

「片栗粉」:介護食を準備している人のうち、片栗粉を使って食事にとろみをつけて提供している人(N=137)、「介護用とろみ調整食品」:介護食を準備している人のうち、介護用とろみ調整食品を使って食事にとろみをつけて提供している人(N=112)

≪まとめ ―調査結果から―≫
 本調査から、日常的に介護食を準備している人に限らず、多くの人が「誤嚥」という言葉を認知し、意味も理解していることが分かりました。また「介護用とろみ調整食品」は、加熱せずにとろみづけができ、ダマにもなりにくく、時間が経っても緩くなりにくいことから、日常的に介護食の準備やとろみづけをしている人ほど利用しているようです。その手軽さからプロの料理人に利用されることもある「とろみ調整食品」ですが、味についてネガティブなイメージを持つ人も多いことから、とろみづけが必要な方々へしっかりメリットを伝える工夫が必要と思われます。

 キユーピーは2020年春に、1袋(600g)で約400回※7使える大容量の粉末状のとろみ調整食品「とろみファイン」を発売しました。食事にとろみをつけて家族と同じ料理が食べられるようになったり、水やお茶だけでなく炭酸飲料にもとろみをつけたりとさまざまな使い方ができ、食事の楽しみが広がります。
 キユーピーは、介護の環境が多様化していく中で、介護する人・介護される人に寄り添った提案を今後も続けていきます。

※7 水100mlに1.5gを加え、とんかつソース状のとろみをつけた場合。


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