研究・調査

21/06/25

No.64

鶏卵の味の濃さ・風味の強さに寄与する成分が明らかに

「メタボロミクス」を食品に応用 鶏卵の品質を客観的に評価できる可能性を示唆

6月22日(火)~24日(木)開催の国際メタボロミクス学会で発表

 キユーピー株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役 社長執行役員:長南 収、以下キユーピー)は、国立大学法人九州大学(総長:石橋 達朗)の馬場 健史教授と共同で、これまで医学・生命科学の分野において用いられてきた「メタボロミクス※1」(=メタボローム解析)を食品に応用し、鶏卵の呈味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味など)や風味に寄与する成分を明らかにしたほか、鶏卵の品質を客観的に評価できる可能性を見いだしました(特許出願中)。この研究成果について、2021年6月22日(火)~24日(木)の三日間にわたり開催された「国際メタボロミクス学会※2」で発表を行いました。

※1 メタボロミクス:生体内の代謝物を網羅的に解析することにより、生命現象を理解しようとする学問領域のこと。
※2 国際メタボロミクス学会:17th Annual Conference of the Metabolomics Society “Metabolomics 2021” https://www.metabolomics2021.org/

再現性や客観性に課題。光明を見いだす、「メタボロミクス」の応用。

 鶏卵の品質は、鶏種、飼料、飼育環境など、さまざまな因子の影響を受けると言われています。一般的に鶏卵の品質は、味覚や嗅覚など、人の感覚を用いて判定する「官能評価」によって決定されます。官能評価は食品の判定で広く用いられる方法ですが、人の感覚に頼るため、再現性や客観性に課題があることも事実です。また、鶏卵の品質には複数の成分が関与するため、特定の化合物に着目した機器分析では適切な予測が困難でした。そこで、医学・生命科学の分野において用いられてきた学問分野「メタボロミクス」を応用し、鶏卵の品質に寄与する成分の探索と、品質予測モデルの構築を試みました。

味の濃さ、風味の強さに寄与する成分が明らかに。客観的な品質評価の可能性も。

 この研究では、鶏卵の品質の中でも特に、呈味(甘味・塩味・酸味・苦味・うま味など)や風味に関する特徴を明らかにすることを目的としました。そこで、生の鶏卵について、複数の項目で記述的試験法を用いて官能評価を行い、同時に、呈味・風味への影響が大きいと考えられる、脂肪酸、糖、有機酸、香気成分について定量分析を行いました。得られたデータから多変量解析を行ったところ、主に味の濃さ、風味の強さに寄与し得る成分を明らかにすることができました。さらに、成分プロファイルからそれらの予測モデルを構築し、客観的に鶏卵の品質を評価できる可能性が示唆されました。

「メタボロミクス」を鶏卵以外にも。お客さまの期待を超える「おいしさ」をお届けしたい。

図解 「メタボロミクス」を活用して、実現したい提供価値

 「メタボロミクス」は、鶏卵の特徴を網羅的に分析しながらも、効率的かつ精度高く評価できる技術です。この技術を使えば、客観的で高精度な品質評価はもちろん、将来的には鶏の飼養条件や飼料配合の検討、加工品の製造条件の最適化、高付加価値商品の開発などへの展開が期待できます(右図参照)。さらには、鶏卵以外の分野にもこの技術の活用・展開を検討することで、「良い商品は良い原料からしか生まれない」という、キユーピーグループが100年を越えて大切にしてきた考え方、そしてそれに基づく私たちの行動を、さらに進化させることができると考えています。

 キユーピーグループはこれからも、新しい技術を積極的に取り入れ活用することで、さらに高いレベルでの“安全・安心のものづくり”を実現し、より確実にお客さまの期待を超える「おいしさ」をお届けしたいと考えています。

【共同研究者・馬場 健史教授からメッセージ】

九州大学 生体防御医学研究所 附属トランスオミクス医学研究センター
馬場 健史教授

「メタボロミクス」(=メタボローム解析)とは、対象に含まれる代謝物を包括的に解析する学問分野であり、生命現象の理解やバイオマーカーの探索などを目的として、主に医学・生命科学の分野において実施されてきました。近年、食品分野においてもこのメタボローム解析を応用した研究開発が行われています。今回、鶏卵中の多様な成分のプロファイルから、呈味風味特性といった観点で、鶏卵の品質を予測する可能性を見いだすことに成功し、鶏卵評価における有用性を確認できました。食品の品質は多くの成分が複合的に関与し形成されるため、メタボローム解析技術は食品の開発、製造プロセスの中で大いに力を発揮すると考えています。今後キユーピーさんが「メタボロミクス」をさらに効果的に活用して新たな研究開発を進められることを期待しています。


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