サステナビリティ・食育

18/06/13

No.29

こども食堂などの運営にまつわる取り組みを共有

第2回「地域の居場所づくりサミット」概要報告5月30日に実施し、総勢122人が参加

 一般財団法人 キユーピーみらいたまご財団(以下、財団)は、2018年5月30日(水)に、第2回「地域の居場所づくりサミット」を、キユーピー渋谷オフィス2階ホールで行いました。第1部では、財団による助成事業の説明と活動報告が行われ、第2部では、「食の居場所づくり講座」を実施しました。当日は、助成団体関係者のほか、こども食堂を運営している人や活動支援者、これからこども食堂をやってみたい人など、総勢122人が参加しました。その詳細を報告します。

第2回「地域の居場所づくりサミット」概要

日 時:2018年5月30日(水) 13:00~16:30
場 所:キユーピー株式会社 渋谷オフィス 2階ホール
 第1部 13:00~14:00 キユーピーみらいたまご財団 助成事業説明会・活動報告会
 第2部 14:10~16:30 食の居場所づくり講座(講演と具体例の紹介)
主 催:一般財団法人 キユーピーみらいたまご財団
共 催:一般社団法人 全国食支援活動協力会

《第1部》A・B二つのプログラムを代表して、2団体が活動事例を報告

 財団の助成プログラムは、A.食育活動、B.食を通した居場所づくり支援の2つがあります。2017年度は計20 団体への助成を行いました。第1部では、財団理事長の三宅峰三郎のあいさつ、事務局からの事業説明に続いて、各プログラムを代表して2つの団体が活動報告を行いました。

             

三宅峰三郎

 冒頭のあいさつで三宅は財団の設立趣旨に触れたのち、「このサミットをコミュニケーションの場として活用いただき、皆さんと力を合わせて支援を行っていきたい。」と伝えました。続く事務局からの事業説明では「助成団体の選定では“みらいたまご”の名の通り、新たな取り組みこそ支援すべきだという意見もあり、始めたばかりの人も遠慮なく助成申請してほしい」と呼びかけました。

【2017年度助成団体の活動報告から】
プログラムA「特定非営利活動法人 森のライフスタイル研究所」 (東京都)

             

竹垣英信氏

 八王子の畑で実施する母子家庭の体験活動支援の様子を紹介しました。代表理事所長の竹垣英信氏は「体験の機会を得ることで興味・関心への幅を広げてほしい。体験を通して健全な食生活を支援していきたい」と語りました。活動の工夫を聞かれ、地域を通して、支援の対象者を知ることができることを紹介したり、今後は収穫した野菜を使って、こども食堂の支援もできるかもしれない、など支援者同士のつながりの可能性にも触れました。

プログラムB「一般社団法人 寺子屋いづみ」(東京都)

             

岩岡いづみ氏

 35年前から続く「学習塾 寺子屋」を通した居場所づくり活動の紹介の後、不定期で実施するこども食堂の様子を報告しました。代表理事の岩岡いづみ氏は、卒業生が運営スタッフとなり、多様な困難を抱える子供たちの支えになっていることや、みんなで食べることは「非日常」であり、多くの支援で成り立っていることを伝えました。また、保育園など地域のネットワークを生かして、活動をきめ細やかに伝えることが大切で、それにより「こども食堂は親の手抜き」などの理解不足を解消したいと訴えました。

参照)「キユーピーみらいたまご財団」助成団体一覧
http://www.kewpiemiraitamagozaidan.or.jp/sponsor/

《第2部》こども食堂の「役割」と「衛生管理」がテーマの講座

 第2部「食の居場所づくり講座」では、こども食堂の果たす役割やこども食堂の衛生管理について、2つの講演が行われた後に、実際に取り組みを行っている団体が事例紹介を行い、居場所の意義やこども食堂の衛生管理について理解を深めました。

“ゆるくつながる、多様なコミュニティー”が理想

 最初の講演は、子どもの未来サポートオフィス代表を務める米田佐知子氏による「こども食堂が地域で果たす役割を考える」です。米田氏は、こども食堂は自発性・多様性が特長で、その規模が急速に広がっていると説明。そのうえで、子どもたちの状況に触れ、貧困といってもさまざまなパターンがあり、課題解決へのアプローチのしかたも多様であるべきと伝えました。今後の在り方として、こども食堂に限らず、多世代と触れ合える小さなコミュニティーが多様にあり、ゆるくつながっていて選べることが大事だといいます。また、最近の動向として、地域の中で大人同士の関係性も途切れてきていること、子どもを気にかける大人のネットワークづくりが大切で、取り組みが各地で始まっていることを伝えました。

米田佐知子氏

こども食堂の衛生管理で大切なのは「方針を決めること」

 続いて、一般社団法人 全国食支援活動協力会 専務理事の平野覚治氏が「衛生と食育 あんしん安全なこども食堂を目指して」と題して講演しました。
 こども食堂に関わっている人は、栄養士などの食品衛生の知識を持っている人が多いが、そうでない人も一定数いる。また、昔はアレルギーなどほとんど気にされなかったが、自身が子どもの時とはアレルギーや衛生管理に対する考え方が変わってきていると強調しました。また、こども食堂の衛生管理への自治体の方針は様々で、営業許可や届出を求めているところもあることを紹介しました。そのうえで、こども食堂の衛生管理のポイントとして、 ①実情に合わせた衛生管理やアレルギーへの対応方針の決定 ②管理方針の共有・可視化を挙げています。2018年6月末発行予定の「こども食堂 あんしん手帖」(写真㊨)を参加者に配布し、具体例を参考にしてほしいと呼びかけました。

平野覚治氏

事例紹介①:かしわっ子食堂あさひ(千葉県)

             

枝川政子氏

 ルール化を徹底することで、誰もが衛生管理をできる仕組みを作り上げるまでの奮闘を紹介。開設当時は柏市で3番目のこども食堂であり、明確な決まりがない中、保健所に通い、栄養士のスタッフのアドバイスなどをもとに「食事はトレーを使い箸は上に置く」、「靴を脱ぐ時は別の人が手伝う(靴に触らない)」「検便の徹底」などを決めています。
 代表の枝川政子氏は、「家庭での衛生の考え方はそれぞれ違う。どこまでやるべきか考えるが、検便も『自分のためでもある』と言ってくれるスタッフの理解が心強い」と語りました。

事例紹介②:にしなりジャガピーパーク(大阪府)

             

横田弘美氏

 プレーパークでの食育とそこから見える貧困について紹介。理事・ゼネラルマネージャーの横田弘美氏は、調理実習は自分たちで調理するため残食もなく、子どもたちが喜ぶことにうれしさを感じる半面、並んで調理をしながらの会話や、食べる場面に貧困が見え、心が痛い思いをすることがあるといいます。
 例えば、スタッフに攻撃的な態度をとる子は、おなかがすいていることが多い。また、与えられた食べ物の取り方、味見の頻度などにも貧困のサインが現れるなど、「あれ?」と思う瞬間を具体的に紹介しました。気づきをスタッフが共有して、親に気付かせる工夫をするほか、ときには区役所や学校、専門機関とも連動して対応することもあるそうです。

             

近藤博子氏

 会の最後にコメントを求められた、こども食堂のはじまりとされる「気まぐれ八百屋だんだん」を運営する近藤博子氏は「児童館や参観日、運動会に顔を出して覚えてもらううちに子どもや親のことがわかるようになった」と実情を見て知ることの大切さを伝えました。「最初から大きいものを目指すのではなく、小さなことでも良いので、始める大人を増やすことが大事」「自分ができないことはできないといっていい。悲しい、困ったも見せていい。子どもたちも理解してくれるはずです。」と活動を考える人にエールを送りました。

 財団では、今後も、「食を通じて社会に貢献する」というキユーピー創業当初からの精神のもと、食育や食を取り巻く社会課題の解決に向けた支援事業はもとより、地域の居場所づくりに役立つ情報発信を行っていきます。

ページの先頭に移動する