知っておきたい高齢期の口腔ケア

今日から始める簡単ケア
〜トラブル予防・ケアのポイント〜

第1回 
オーラルフレイルとは?

第1回 オーラルフレイルとは?

ご飯を食べたり、話をしたり、歌ったり、笑ったり、ため息をついたり…。私たちは、日常生活で口を絶えず使っています。体調が悪いときや心配ごとがあるときは、食欲がなくなったり無口になったりします。口は、日々の暮らしや健康、周囲とのコミュニケーションに直結しています。そんな大切な口の働きを守るためのケアは、どの世代にも必要です。中でも高齢期は体全体の働きが衰えてくるため、それを補うためのケアが欠かせません。最近、活動量が減ってきたり、食事の量が少なくなったりしていませんか? あなたの口の働き、少しずつ衰えているかもしれません。

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口の働きとオーラルフレイル

① 食べるための口の働き

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口の働きを考えてみると、「呼吸」「食べる」「話す」「気持ちを表す(表情)」など、生きていく上で欠かせない役割ばかりです。
食べるためには噛む・飲み込む、という働きが必要なので、歯が健康で噛み合わせが良いことだけでなく、唾液や舌、筋肉の働きも重要です。

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⇒ 食べるための口の働きについては、こちら(食べるための口の働き、ご存知ですか?)もご覧ください。

② あなたもオーラルフレイルかもしれません!

「8020運動」という言葉を聞いたことがありますか?これは「80歳になってもしっかり食べられる自分の歯を20本残そう」という取り組みです。この運動のおかげで、多くの方が自分の歯を長く保つことができるようになりました。しかし、歯が残っているだけでは、十分とは言えません。噛み合わせの悪さや歯周病、さらに全身の筋力低下が影響して、口の機能が低下してしまうことがあります。これが「オーラルフレイル」と呼ばれる状態です。
オーラルフレイルは、口全体の機能の低下を指し、しっかり噛むことや食べることが難しくなります。放っておくと、全身の健康にも影響を及ぼし、フレイル(虚弱)につながる可能性があります。そのため、国や医師会、歯科医師会も、年齢とともに現れる口の機能低下に注意を促し、正しいケアで健康な口を維持することを推奨しています。

以下は、オーラルフレイルが疑われる代表的なサインです。あなたやあなたのご家族に当てはまることはありませんか?


オーラルフレイル
チェック項目

該当

非該当

自身の歯は、何本ありますか?
さし歯や金属をかぶせた歯は、自分の歯として数えます。インプラントは、自分の歯として数えません。

該当
□ 0〜19本

非該当
□ 20本以上

半年前と比べて固いものが食べにくくなりましたか?

該当
□ はい

非該当
□ いいえ

お茶や汁物等でむせることがありますか?

該当
□ はい

非該当
□ いいえ

口の渇きが気になりますか?

該当
□ はい

非該当
□ いいえ

普段の会話で、言葉をはっきりと発音できないことがありますか?

該当
□ はい

非該当
□ いいえ

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5つの項目のうち、「該当」が2つ以上あるとオーラルフレイルです。

出典:オーラルフレイルに関する3学会合同ステートメント(日本老年歯科医学会、日本老年医学会、日本サルコペニア・フレイル学会)

このような「ささいな変化」に気づくことが、口腔ケアの第一歩。早めの対策が将来の健康を守る鍵になります。大切な口の働きの変化に意識を向けていきましょう。

③ オーラルフレイルを防ぐには?

オーラルフレイルは、早期発見と正しいケアを続けることで、口周りの老化や働きの低下を緩やかにし、放置すれば失われる可能性のある口の機能を回復させる余地がある、とされています(日本歯科医師会:歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年版)。
オーラルフレイルを防ぐために今から意識したいポイントを紹介します。

  • 口を清潔に保つ:歯みがき、舌みがき、保湿、唾液腺マッサージなどで、清潔さと潤いを保ちましょう。
  • よく噛む:食事以外にも、ガムやするめを噛むなどのトレーニングを取り入れてみましょう。
  • 口を動かす:話す、歌う、笑う、口の運動などを、誰かと一緒に楽しみながら行いましょう。
  • 食事に関心を持つ:偏食を避け、さまざまな食べ物をバランスよく食べましょう。
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口の働きとオーラルフレイル
おさらいクイズ

.丁寧に歯みがきだけしていればオーラルフレイルは予防できる。

正解はNO!

歯みがきをして口の中を清潔にしておくとともに、口の働きの衰えも予防することが大切です。口の働きが衰える引き金は、不衛生な口の状態だけでなく、退職や大切な人とのお別れによる孤立感が、会食や会話の機会を遠ざけ、自分の口への無関心につながることも少なくありません。誰かと一緒に食べたり話したりして、口を動かす機会を増やしましょう。

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生活と切り離せない口腔ケア

私たちの日常生活に欠かせない口の働きと同様に、口腔ケアも健康を支えるために欠かせません。世代により体の状態も異なるため、ケアの主な目的にも違いがあります。

<年齢層別>
必要な口腔ケアとその目的

[ 1 ]乳幼児期(0~5歳)

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口腔ケア

仕上げみがき、甘いもの摂取のコントロール、定期的な歯科検診

目的

乳歯の健康を守る

[ 2 ]児童期(6~12歳)

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口腔ケア

正しいブラッシング方法の習慣づけ、歯列矯正の検討、虫歯予防の処置

目的

永久歯の健康と正しい歯並びの維持

[ 3 ]思春期~青年期(13~24歳)

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口腔ケア

デンタルフロスや歯間ブラシの使用、定期的な歯科検診

目的

健康な歯の維持と口臭予防

[ 4 ]成人期(25~64歳)

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口腔ケア

歯周病の予防ケア、審美的なケアの検討

目的

虫歯や歯周病の予防、口元の美しさの維持

[ 5 ]高齢期(65歳以上)

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口腔ケア

義歯のケア、残存歯の健康管理、定期的な歯科検診やクリーニング

目的

歯の機能維持とオーラルフレイルの予防

① 口腔ケアとは健康長寿を支えるケア

高齢になると、社会とのつながりが薄れることで心身の活力が低下し、要介護状態に向かいやすくなるという報告があり(大規模高齢者虚弱予防研究・柏スタディー2015)、健康長寿を願うならば、栄養・身体活動・社会参加の3つの要素が重要と言われています。
身体活動や社会参加と口腔ケアがどう関係しているのか、疑問に思うかもしれませんが、社会とのつながりの中で良い人間関係が築かれることも、幸福で健康な人生には大切な要素です。ここで欠かせないのは体力と気力、円滑なコミュニケーションです。それを支える要素の一つが栄養(食事)であり、栄養を摂るためには「清潔でしっかり噛める口」が必要なのです。

しかし、難しく考えることはありません。日常生活の中で、食べたり話したり、笑ったり歌ったりと、周りの人との交流を保つことで、自然と口を使う機会が増えていきます。

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東京大学高齢社会総合研究機構
教授 飯島勝矢 提唱

② 口腔ケアに期待できる効果

口腔ケアの目的は、口の衛生環境を改善することだけでなく、口の働きを維持することも含まれます。口の環境が改善すると、日常生活にどんな変化・効果が期待できるのでしょうか。

▼ 清潔で健康な口になる

  • かたい食べ物もしっかり噛めるようになります。
  • きれいな舌だと食べ物のおいしさをより感じやすくなります。

▼ 唾液の分泌が促される

  • 食べ物をスムーズに飲み込めるようになります。
  • 口の自浄機能が向上します。
  • 滑舌がよくなります。
  • 口臭を防ぎます。

▼ 偏食が改善される

  • バランスの良い食事ができるようになり、体力や筋力が向上します。
  • 免疫力の向上が期待できます。

▼ 体力・免疫力が向上する

  • 日常的な動作や活動範囲が広がります。
  • 誤嚥や誤嚥による肺炎のリスクを減らせます。
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TOPIC:国や自治体も推し進めるフレイル予防・口腔ケア

高齢者の健康な生活を支えるために、国もフレイル予防に取り組んでいます。その一環として口腔ケアや栄養管理の重要性に着目し、国民健康・栄養調査で食べる力を質問したり、歯科検診で口の状態を定期的にチェックすることを呼びかけたりしています。
実際、平成30年に神奈川県海老名市歯科医師会が取り組んだ「口腔ケアによる健康寿命延伸事業」では、オーラルフレイル該当者172名に予防のためのプログラムを4週間続けたところ、56%強にあたる97名に改善がみられ、オーラルフレイル非該当となったことが報告されています。

オーラルフレイルの改善

参考:一般社団法人神奈川県歯科医師会.平成30年度神奈川県「口腔ケアによる健康寿命延伸事業」調査報告書

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生活と切り離せない口腔ケア
おさらいクイズ

.食べることは口腔ケアの一部である

正解はYES!

口腔ケアと聞くと、歯みがきや専用の器具を使ったお手入れを思い浮かべるかもしれませんが、食べることも非常に重要な口腔ケアの一部です。食事をすることで、噛む力や舌の動きが活性化し、唾液の分泌も促進されます。これにより口の中が清潔に保たれ、口腔機能が維持されるのです。口腔ケアは、ただの清掃だけでなく、日常的な食事や口の動かし方も含まれています。

戸原先生より「口腔ケアを身近に」

いま、ご自身の口に問題がなくても、年とともに口の機能にも自然な衰えが生じ、大小さまざまなトラブルが起こり得ます。これらのトラブルを未然に防ぐためには、口腔ケアを日常生活の一部として取り入れることが大切です。例えば、定期的な歯みがきや舌のケア、よく噛むことなどが有効です。これらを意識して実践することで、いつまでも元気においしく食べられる口を守りましょう。

次回は「口から始まる健康管理」と題して、トラブルが小さなうちに発見するためのポイントをお伝えします。

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