キユーピーアヲハタニュース
2006/8/4 No.47
★研究結果

鳥インフルエンザウイルスの科学的知見を世界に公表
鳥インフルエンザウイルスは60℃加熱で不活化し
マヨネーズの中では30分以内に不活化

8月14日にカナダの国際学会で報告
 
 キユーピーは、鳥インフルエンザウイルスが次亜塩素酸ナトリウムおよびアルコールでの消毒ですぐに不活化すること、また熱に弱くて60℃に加熱するとすぐに不活化すること、さらにマヨネーズ中では30分以内に不活化することを、8月にカナダのカルガリーで行われる国際学会(International Association for Food Protection)で報告します。
 鳥インフルエンザについては、「食品(鶏卵、鶏肉)を食べることによりインフルエンザウイルスが人に感染することは世界的にも報告されていない」(農林水産省、厚生労働省)のですが、キユーピーでは耐熱性はどうか、マヨネーズに混入したらどうなるかなどを研究してきました。得られた知見は2004年に国内で学会発表し、専門誌にも投稿しています。
 その後鳥インフルエンザが世界的な広がりを見せてきたことから、科学的な知見を世界で共有できるように、次亜塩素酸ナトリウムおよびアルコールによるウイルス不活化のデータも加えて、国際学会で報告することにしました。
 

図1 マヨネーズ中での鳥インフルエンザウイルスの不活化
ウイルス量:50%発育鶏卵感染量
 
 当社グループでは、日本で生産される鶏卵250万トンの9%に当たる23万トンを使用しており、製品の開発や品質管理に役立てるため、卵に関連する微生物の耐熱性などを調べてきました。また、防腐剤などは使わず、食酢と食塩の力で腐敗を防いでいるマヨネーズに、食中毒菌が混入したらどうなるのかなどについても調べています。
 鳥インフルエンザについては、食品衛生に関連する研究があまり多くなかったため、将来日本で発生する可能性もあると考え、2002年から鳥取大学と共同で研究してきました。

【発表内容】
1.次亜塩素酸ナトリウムおよびアルコールでの不活化効果
 次亜塩素酸ナトリウム、アルコールでの殺菌が、鳥インフルエンザウイルスの不活化にどの程度効果的か、H5型ウイルスを使って調べました。
 次亜塩素酸ナトリウムは100ppm以上の濃度であれば10秒間で、80%エタノールでも10秒間で鳥インフルエンザウイルスは不活化し、感染性を失うことがわかりました。
 通常、割卵工場では200ppmの次亜塩素酸ナトリウムで、卵の殻の表面や割卵機、器具、備品などを消毒しています。したがって、卵表面や器具などに鳥インフルエンザウイルスが付着していても、次亜塩素酸ナトリウムでの消毒ですぐに不活化するといえます。
 また、手指の洗浄には、アルコール消毒が有効であるといえます。
 
2.鳥インフルエンザウイルスの耐熱性
 卵黄に鳥インフルエンザウイルスを加え、耐熱性を調べました。
 H5型、H7型ウイルスは55℃達温(55℃になったらすぐ)で、H9型ウイルスは55℃で2分間の加熱、または60℃達温で不活化し、感染性を失いました(表1)。
 食品衛生法では、連続式で殺菌する場合、卵黄は61℃、3.5分間と同等以上の効力を有する方法で加熱殺菌しなければならないとされており、鳥インフルエンザウイルスが感染性を失う条件はこれよりも十分に低いといえます。
 キユーピーマヨネーズに使用する卵黄は、61℃、3.5分間よりも厳しい条件で殺菌しています。
 
表1 鳥インフルエンザウイルスが不活化する条件
 55℃で加熱60℃で加熱
H5型
達温
達温
H7型達温達温
H9型2分間達温
[出典]伊藤壽啓、伊藤啓史、大槻公一、指原信廣、長谷川峯夫:加熱した卵黄内における鳥インフルエンザウイルスの生残性.食品衛生研究、54(7) 21−24(2004)
 
3.マヨネーズ中での食中毒菌の消長
 キユーピーマヨネーズに鳥インフルエンザウイルスを加え、消長を調べました。
 H5型ウイルスは30分以内に、H7型とH9型ウイルスは10分以内に不活化し、感染性を失うことがわかりました(図1)。
 鳥インフルエンザウイルスがマヨネーズに混入したとき、30分以内に不活化する理由は二つ考えられます。一つは、鳥インフルエンザウイルスはpHが低い(酸性になる)と不活化するので、マヨネーズに含まれる食酢の作用で感染性を失ったということです。もう一つは、乳化された植物油により、鳥インフルエンザウイルスの殻(エンベロープ)が壊され、不活化したということです。
[発表] 指原信廣、大河内美穂、長谷川峯夫、伊藤壽啓、第25回日本食品微生物学会学術総会(2004)
 
【参考資料】
1.ウイルス
 ウイルスとは、DNAまたはRNAと少数のタンパク質からなる粒子状の物質です。単独では増殖することはできないので、他の生物の細胞に侵入し、その細胞がもっている機能を使って、自分と同じウイルスを複製し、増殖します。
 
2.鳥インフルエンザウイルスと殻(エンベロープ)
 鳥インフルエンザウイルスは、脂質とタンパク質でできた殻で覆われています。この殻の表面にあるタンパク質が他の生物の細胞にくっつき、侵入します。殻が壊れると細胞に侵入することができなくなり、ウイルスとしての機能がなくなってしまいます。
 殻は脂質でできていますから、脂質を溶かすような溶媒、アルコールやエーテルなどで壊すことができます。
 また、鳥インフルエンザウイルスはpHが低いと不活化することが知られています。
 
3.50%発育鶏卵感染量
 ウイルスは、発育鶏卵(ヒヨコが発生する過程にある卵)に試料を接種し培養して、試料の中にいるか(感染性があるか)を調べます。
 細菌であれば菌の数を測定することができますが、ウイルスは数えることができません。そこで、どのくらい希釈したときに50%の発育鶏卵が感染されるかで、ウイルスの量を表現します。
(例)100万倍希釈したときに50%の発育鶏卵が感染されたとすると、50%発育鶏卵感染量は100万倍となります。