キユーピーアヲハタニュース
2004/03/30 No.17
★研究結果

キユーピー(株)研究所が学会発表
マヨネーズがβ−カロテンの吸収量を7倍に高める結果に
〜サラダとマヨネーズの組み合わせが栄養の吸収を促進〜


3月30日に日本農芸化学会で報告

 近年、食物の健康機能が大きく注目されています。キユーピーは約20年前から「野菜をもっと食べましょう」と、野菜を主体にしたメッセージをお伝えしています。野菜の栄養素を効率よく取り入れるための研究発表として今回、キユーピーは、マヨネーズとβ−カロテンを一緒に摂取することで、どれくらい吸収が促進されるかを調べました。その結果、β−カロテンをそのまま食べた場合を1としたとき、マヨネーズと一緒に摂取することで、吸収が7倍に高まることを示唆する結果が得られました。(図1)これは、マヨネーズに含まれる「卵黄」とマヨネーズの「乳化」が関与していることによるものです。

図1 β−カロテンの体内吸収量
図1 β−カロテンの体内吸収量
【β−カロテンを食べたときを1とした場合 〜ラットによる試験より〜】


 本日、キユーピーは広島大学で開催された日本農芸化学会にて「マヨネーズによるカロテノイドの吸収促進効果」について発表しました。実験では、サラダとマヨネーズを一緒に食べたときを想定し、マヨネーズと一緒に食べることで野菜に含まれる栄養素の吸収量にどのような影響があるかを、脂溶性ビタミンやカロテノイドの代表としてβ−カロテンを使用し、ラットの試験にて調べました。


学会内容については以下の通りです。


 野菜には水溶性のビタミン(ビタミンB群やビタミンC等)、脂溶性のビタミン、カロテノイド(野菜の色素)、食物繊維、ミネラル(カルシウムや鉄、亜鉛等)などの健康維持に欠かせない栄養素が豊富に含まれています。その中でも水に溶けない脂溶性のビタミンやカロテノイドは、不規則な生活を送り、常にストレスにさらされている現代人にとって活力を与えてくれる大切な栄養素です。
 これらの野菜に含まれる脂溶性のビタミンやカロテノイドが体に吸収されるには油が必要です。油に溶け出すことにより初めて体に吸収されるのです。

脂溶性ビタミンとカロテノイドの多い野菜(きのこ含む)

ビタミンA/β−カロテン… ニンジン、モロヘイヤ、カボチャ、インゲンなど
ビタミンD…………………… シイタケ、シメジ、エリンギなど
ビタミンE…………………… ホウレンソウ、赤ピーマン、ブロッコリー、アボカドなど
ビタミンK…………………… ホウレンソウ、サニーレタス、ミズナ、キャベツなど

【実験(1)】
<方 法>
今回のキユーピー研究所での動物実験(ラット)では、
(1) β−カロテンと蒸留水を投与
(2) β−カロテンと植物油を投与
(3) β−カロテンと卵黄型マヨネーズを投与
<結 果>
投与後2、4、6、8時間目に採血を行い、血清中のβ−カロテン濃度を測定しました。その結果、血清中のβ−カロテン濃度は(1)に比べ(2)、(3)で高い値を示しました。特に(3)は(1)、(2)に比べ明らかに高い値を示しました。このことから、マヨネーズが植物油に比べβ−カロテンの吸収を促進することが確認されました。(図1)

 なぜ、マヨネーズがβ−カロテンの吸収を高めるのか調べたところ、マヨネーズの卵黄とマヨネーズ中の乳化が吸収促進に関与していることがわかりました。【実験(2)、(3)】

【実験(2)】
<方 法>
β−カロテンを含む配合飼料(1)およびβ−カロテン配合飼料に(2)〜(4)をそれぞれ添加し、ラットに2週間与えました。
(1) β−カロテン配合飼料のみ(Control群)
(2) マヨネーズ5%に含まれる油脂含量と同量の植物油を配合した群(Oil群)
(3) マヨネーズを飼料中に5%配合した群(MS群)
(4) (3)に含まれる植物油と卵黄油を配合した群(PL群)

図2 肝臓中β−カロテン濃度 *p<0.05 有意義あり

図2 肝臓中β−カロテン濃度  

<結 果>
肝臓中のβ−カロテン濃度は(1)と比べて(2)で高く、さらに(3)および(4)では(1)に対して明らかに高値を示しました。このことから、卵黄成分がβ−カロテンの吸収に関与していることが示唆されました。

【実験(3)】
<方 法>
β−カロテンが油脂に溶解されると考えられる胃の中の状態を再現し、マヨネーズと植物油で、どちらの方がβ−カロテンをより溶解するか検討を行いました。
ビーカー内にすりおろしたニンジンと人工胃液およびマヨネーズまたは植物油を加えた後、プロペラ攪拌機を使用して攪拌(100rpm)を行いました。攪拌時間は5、10、30、60分とし、マヨネーズおよび植物油に溶解したβ−カロテン量を測定しました。

図3 β−カロテン濃度 β-カロテン濃度(μg/mL)
  Oil MS
0分 0.0 0.0
5分 3.6 8.1
10分 6.2 17.5
30分 10.9 30.4
60分 14.7 43.4
マヨネーズに含まれる油脂中の
β-カロテン濃度
図3 β−カロテン濃度

<結 果>
β−カロテン濃度はすべての時間帯においてマヨネーズの方が植物油に比べて高い値を示し、60分まで、時間の経過とともにその差は大きくなりました。

 胃の中では、食べた植物油と胃液(野菜の成分)とが分離しています。マヨネーズは酢と植物油を卵黄によって乳化している水中油滴型の乳化食品であることから、植物油単独よりも胃液中で分散されやすく、胃液と均一に混ざります。そのため、植物油よりもマヨネーズの方がβ−カロテンを含む食物と触れる機会が増え、β−カロテンが溶解しやすいと考えられます。



 今回、マヨネーズがβ−カロテンの吸収量を高めることがわかりましたが、今後、他の脂溶性ビタミンや、ヒトでの試験などの研究をすすめていく予定です。

【参考資料】
<野菜の効能>
 カロテノイドを多く含む食品には、ニンジンやホウレンソウ、カボチャなどの緑黄色野菜があります。カロテノイドの代表であるβ−カロテンは、生体内に発生し、老化やがんなどの原因となっている活性酸素の消去作用(抗酸化作用)を有しており、ビタミンAの供給だけでなく、疾病の予防にも役立つことが知られています。